2021年12月10日公開
【2022年1月12日更新】
大津海岸の今の様子が見られます。こちらの「ジュエリーアイスプロジェクト」からご覧下さい。
キラキラと輝く氷が砂浜を埋め尽くし、神秘的な景観を作り出すジュエリーアイス。今やその名は世界的に知られるようになり、氷の宝石を一目見ようと国内外から観光客が訪れています。
世にも美しいジュエリーアイスですが、新名所となった豊頃町を訪ねれば必ず見られるというものではありません。潮の流れや風向きによって、全く見られないということも少なくないとか…。
とは言え、季節は極寒の1月〜2月。せっかく出かけるのだから、少しでも高確率で見られる方法を知りたいですよね。そこで、ジュエリーアイスについて研究する北見工業大学 吉川泰弘准教授にジュエリーアイスができる仕組みや、どうすれば見られるのかを直撃してみました!
かわたびくん そもそもジュエリーアイスって、なんですか?
吉川准教授 十勝川の水が凍ったものが潮の満ち引きで割れたり砕かれたりして、海に流され、角が取れて、砂浜に打ち上げられたものです。
かわたびくん ということは、ジュエリーアイスの正体は、十勝川の水?
吉川准教授 …ということになります。
かわたびくん 普通の氷よりキラキラしてますよね?
吉川准教授 例えば冷凍庫で凍らせた氷のように、水が急激に冷やされて固まると中に空気が閉じ込められて白くにごります。一方、川の水がゆっくり冷やされて凍ると空気が押し出され、透明な氷ができるんです。それが打ち上げられて太陽の光を反射すると宝石のように輝くわけです。
かわたびくん 豊頃町でしか、見られないんですか?
吉川准教授 自然現象なので条件がそろえば他の場所でも見られる可能性はあります。北海道では鵡川や常呂川の河口付近で見られたという報告を聞いています。
かわたびくん 海外では?
吉川准教授 アメリカのニューヨークタイムズ紙が「世界的に珍しい」と取り上げたほどなので、海外でも例は少ないのだと思います。
かわたびくん それならなおさらホンモノを見たいんですが、せっかく行ったのに見られないのは嫌なんで。絶対に見られるいい方法はありませんか?
吉川准教授 絶対はないですが、確率を高める方法はあります。
かわたびくん それを教えてください!
吉川准教授 先程話したようにジュエリーアイスは十勝川の水が凍ったものです。氷が砕けて海へ流されるのは潮の満ち引きが関係していて、干満の差が大きくなる大潮の後や海が荒れた後などに発生する確率が高くなります。また、北風東風が吹いていると海岸に打ち上げられやすくなるので、これらの条件が重なりそうな時に見に行くと、確率が上がると考えられます。
定点カメラがとらえた海へと向かう河氷。十勝川河口にて。
(写真提供:吉川准教授、調査協力:福田水文センター)
かわたびくん それは良いことを聞きました。ところで先生はジュエリーアイスの発生を予測する方法を研究しているとか。
吉川准教授 そうなんです。今お伝えしたような気象データを元にジュエリーアイスの発生を予測するモデルの研究をしています。定点カメラで川の水位(潮位)の変動を観測したり、川に浮子とGPSを流して風や波の影響を測定したりして、ジュエリーアイスの出現を計算で導き出せないかと考えています。
十勝川河口での調査に使われた浮子
(写真提供:吉川准教授、調査協力:福田水文センター)
GPS投入時の様子(写真提供:吉川准教授、調査協力:福田水文センター)
かわたびくん 実際、予測できるんですか?
吉川准教授 川で氷が形成されて砂浜に打ち上がるまでの現象を数式で現わす試みをしています。これらの数式と気象データ(気温、風向、風速、潮位)から導き出したジュエリーアイスの推定量は、実際に打ち上がったジュエリーアイスの出現時期を比較的高精度で予測できるという結果になりました。
かわたびくん それはすごい! せっかく見に行ったのに残念な思いをしなくて良くなりますね。
吉川准教授 今後、実用レベルで出現予測ができるようになれば、国内外の観光客が北海道に足を運ぶきっかけになるでしょうから、地域振興にも貢献できるのではと考えています。
◉北見工業大学 吉川泰弘准教授 Profile
工学博士。北海道開発局勤務などを経て北見工業大学の教員に就任。寒冷地河川における治水・利水・環境・観光に関する研究に取り組む。
「川は私たちの生活に不可欠なものですが、寒冷地の河川を専門にする研究者は少数。人と川が上手に付き合っていけるよう、研究成果を生かしていきたいですね」