北海道に火山は少ないと思っている人が多いかもしれませんが、都道府県別でみる北海道にある火山数は全国一位(北方領土を含む)。恵庭岳や羊蹄山、ニセコ、恵山などの身近な山々も活火山に指定され、全国にある活火山の1/3が道内に点在しています。
「十勝岳火山砂防情報センター(愛称ヴォルガ)」は、1988年の十勝岳の噴火を契機に、美瑛町白金地区に設置された施設。十勝岳の状況を24時間体制で監視し、平時は、火山や防災について楽しみながら学ぶことができます。
火山はいつ噴火してもおかしくない
北海道にある活火山は全部で31。かつては活動中(噴火している)の火山を「活火山」、噴火していない火山を「休火山」あるいは「死火山」と呼んでいましたが、火山の寿命は数万年単位であり、噴火活動の間隔も一定したものではないことから、今後噴火する可能性がある火山は全て「活火山」と呼ばれるようになりました。
2021年も地震や火映が観測された十勝岳
近年、北海道で大きな被害を出した火山のひとつが十勝岳です。特に1988年から翌89年にかけての活動では断続的な噴火が起こり、火砕流(※1)、火砕サージ(※2)、泥流(※3)が発生。白金温泉地域の住民は長期間の避難生活を余儀なくされました。なお、美瑛町の青い池は、この噴火の後、泥流を防ぐために設置された堰堤に水がたまり池のようになったものです。
十勝岳はおよそ30年周期で噴火を繰り返しており、1988年の噴火から既に30年以上が経過しています。2021年にも火口で微弱な火映が確認されており、万が一への備えは常にしておかなければなりません。
※1火砕流…高熱の岩石や破片が斜面を流れ下る現象
※2火砕サージ…火山灰と空気の混ざった高熱の爆風
※3泥流…火山灰や溶岩のかけらが川の水などと混ざって流れるもの。山に積もった雪と混ざって流れるものを融雪型火山泥流という。
噴煙を上げる十勝岳
24時間体制で十勝岳の状態を観測
「十勝岳火山砂防情報センター」は1988年の噴火の後、火山観測の前線基地として白金地区にオープンし、「ヴォルガ」という愛称が付けられました。地域住民の一時避難場所としての役割も持ち、白金地区から住民、観光客等が迅速に避難できるよう、ブルーリバー橋の横に屋根付きシェルター(避難階段)が設置されています。
ヴォルガの主な役割は十勝岳の監視です。十勝岳周辺に設置されたワイヤーセンサー、振動センサー、監視カメラなどの情報を集約し、噴火および泥流の発生が予測された場合には、最前線の対策本部として機能します。
屋根付きシェルター(避難階段)の入口。286段ある階段を上ると十勝岳火山砂防情報センターはすぐそこに。
模型やパネルで火山の不思議を学ぶ
平常時、施設は一般公開されており、1階のシアタールームでは、火山災害と砂防事業をテーマとした映像作品を上映。2階の展示室では模型、パネルが展示され、噴火の際に泥流が発生するメカニズムなどを学ぶことができます。
また観測のため白金地区の高台に位置していることから、眼の前に広がる十勝岳の眺望も訪れる人を楽しませてくれます。
先ほど紹介した避難階段を通れば「白ひげの滝」から5分ほどで施設に行くことができます。十勝岳ジオパークの拠点施設のひとつにもなっており、ここからジオストーリーに沿った学びを深めていくことができます。
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