2021.07.19公開

旧岡田倉庫

石狩川の舟運を支えた旧岡田倉庫の、これまでとこれから物語。

JR江別駅にほど近い通称「条丁目地区」。商店街の跡や木造づくりの古い家屋など往時を偲ぶ建造物が数多く残るこの界隈に、ひときわ目を引く石造りの倉庫があります。江別市の文化財にも指定されている旧岡田倉庫です。

この倉庫が建てられたのは明治30年(1897年)のこと。当時の石狩川は「外輪船」による舟運が盛んな時代。鉄道との連結点でもあった江別港(江別川/現在の千歳川に面していました)から、月形町の樺戸集治監や周辺の住宅地、さらに近隣の開拓地に食料や日用品が頻繁に運び込まれており、岡田倉庫はそれらの保管場所として活用されていました。

昭和の時代に入り鉄道や自動車運送が主流になると舟運は衰退し、岡田倉庫もその役割を終えます。しかし札幌軟石を使った剛健な造りを持ち、さらに江別と石狩川の歴史を象徴する貴重な存在でもあることから、江別市2条1丁目の建立の場にそのまま保存されてきたのです。

そこから半世紀を経た平成11年(1999年)。岡田家より倉庫の寄贈を得た江別市は2年の歳月をかけ、このいにしえの建造物をアートスペース「外輪船」へと改修。そこから劇団の公演や音楽会開催の場として、絵画や写真などを展示する表現の場として広く活用されてきました。

江別市のまちづくり活動に尽力している林匡宏さんも、この旧岡田倉庫を活用してきた一人。
「倉庫の佇まいもさることながら、千歳川に近接し歴史的な面影も残す条丁目エリアというロケーションも魅力です。特に官民一体となって水辺の新たな活用を模索するミズベリングというプロジェクトでは、大学や商店、地元神社など多くの市民に集っていただき、自由にアイデアを出し合うディスカッションの場として活用させていただきました」

そこで生まれたアイデアが「ミズベのロングマーケット」というイベント。千歳川のほとりにバザーを並べたり、調査船でクルーズ体験をしたり、水辺のカフェを開催したり。旧岡田倉庫はロマン漂う音楽イベントのステージとなりました。
「非常に盛況なイベントとなりました。川から始まった江別の街づくりを多くの方に印象づけるきっかけにもなった気がします」

現在、旧岡田倉庫は千歳川堤防整備に伴い近接地の移築が予定されているとか。実は林さんは、その移築先やその後の活用について協議する「江別市かわまちづくり協議会」のメンバーでもあります。
「歴史的な見地だけでなく、これからの江別の街づくりにおいても重要な役割を担う建造物。これまで運営・活動してこられた地域の方々とともに、専門家や有識者、地元の大学生など新しい意見も広く取り入れながら、素敵なアイデアを積み上げていきたいと思っています」

旧岡田倉庫から新生岡田倉庫へ。その姿や役割がどう変貌し、どう進化していくのか。今からとても楽しみです。

林匡宏さん:まちづくりコーディネーター。首都圏のグランドデザインに関わった業務経験をいかし、江別市のまちづくりにも参加。ミズベリング・景観委員会・かわまちづくりなど江別市の多種多様な協議会の理事/メンバーとなっている。参加者の声や意見をデザイン画としてまとめ上げる「絵師」というユニークな一面も。

 

旧岡田倉庫(アートスペース外輪船) マップコード:139 397 348*70

 


旧岡田倉庫のほど近くに建つ「筒井1号倉庫」。今後、取り壊しが決まっています。

筒井1号倉庫 マップコード:3139 397 376*43

 

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